2015年5月13日水曜日

対談。安田寿之 × 新川忠(3)


C H A P T E R 3 強度。


安田 いい曲ができるときって、
   5分でできますよね。

新川 できますね。
   すぐできちゃう。

安田 時間をかければ
   いいってもんじゃないんで・・・
   作曲は、ほんとに難しいと思いますねぇ。
   あの、その曲が強度を持ってるかどうかって、
   時間が経たないと
   わからないとこあるんですよねぇ。

新川 はいはい。

安田 作ったときは
   「すごいいい曲できた」とか思っても、
   もう1回聴いたら
   「なんじゃこりゃ」ってものもあるし・・・

新川 わかります。

安田 逆に作ったときはピンと来てなくて、
   ほんとにパッパッと
   5分で作ったような曲なのに、
   10年経っても、こう、
   自分でもいいと思えるような曲も・・・

新川 ありますよねぇ。

安田 だからほんとに、自分の意図を超えて、
   「曲」って、育っていくもんだと思いますね。
   どう育つかっていうのは、
   自分で決められないというか。

新川 そうなんですよ。

安田 だから時間かかっちゃうんですけど。
   時間が経って、
   その曲がいい曲かどうか本当にわかってから、
   レコーディングする・・・
   っていうようにしてたら、
   時間かかっちゃいましたね、
   今度のアルバム(笑)。

新川 そう、今回の「Nameless God's Blue」、
   ぼくは、すごくアルバムとして
   完成されてると思って、
   非常に感心したんですけど、
   いろんなところで今まで作ってきたものを
   まとめてみたものなんですね。
   最初からコンセプトがあったわけではなく。

安田 そうですそうです。
   全然コンセプトはなくて。

新川 それを知ってびっくりしたんですけど。
   なんでこんなにまとまったんだろう
   と思って(笑)。
   あのまとめ方はとんでもないですよ。
   すごいプロデュース能力だと
   言わざるを得ません。

安田 でも、使う楽器を絞っていって、
   バンドみたいに
   全曲同じプレイヤーに
   同じ楽器を演奏してもらう
   っていう風にしたので、
   まとまりは自然にできたんですよね。
   (前作の)「Children's Songs 2050」
   みたいにグチャグチャな(笑)、
   毎曲違うみたいなアレンジだと、
   まとめるのは
   やっぱり難しいと思うんですけど。
   まぁ、バンドみたいな形でやれば、
   嫌でもまとまるかなとは思ったんですよね。

新川 でも、それでちゃんと上手くいったのは、
   すごいですよ、やっぱり。

安田 まぁ、曲も・・・
   今お話したように「ベスト盤」みたいな形に
   できるといいなと思ってたので、
   「この曲は絶対入れよう、
    強度ちゃんと持ってる」
   って、確認してやっていきましたから。

新川 だから、ああいう力強いアルバムに
   なったんですね。

安田 そうですね。
   仕事で作った曲だったんですけど、
   ずっと自分の中に残ってるものを集めて・・・
   プラス、アルバムとして、やっぱり
   「この曲とこの曲の間に
    こういう曲が欲しいな」
   っていうので作った曲もありますけど。

新川 そこは、やっぱりこう、
   パズルのピースを埋めるような感じで。
   あとから
   「ここにこれがあればバッチリだ」と。

安田 そうですね。
   そこは穴埋め的に。

新川 いや、でも、あれはほんとに・・・
   すごいアルバムですよ。

安田 いやいやいや(笑)。

新川 久しぶりに、あの・・・
   なんでしょうねぇ。
   もう、ここんとこ、夢中で音楽を聴く
   っていうことがなくなってて。
   誰しもそうなんでしょうけど、
   だんだんいろんなものに
   興味なくなっていくじゃないですか。

安田 はいはい、そうですよね。

新川 だから、CDとかアルバムとか買っても、
   あんまりこう、若いころのように
   真剣な態度で聴くってことが、なくてですね。

安田 うんうん。
   昔はもう「2000円、元とってやろう」
   と思って・・・

新川 そうそう(笑)。

安田 CDが減るんじゃないかってくらいね(笑)。
   聴いてましたけどねぇ。

新川 それこそスピーカーの前に体育座りとかして、
   歌詞カードとかジトーッと見ながら・・・

安田 (笑)

新川 もう「聴き込む!」っていう。
   「本気聴き」みたいなこと
   やってましたけど、最近は、
   ほんとにちょっとしたBGM的な・・・

安田 そうですね。

新川 平気で途中で聴くのやめちゃったりとか、
   曲名も覚えないような、
   そういう感じだったんですけど・・・
   久しぶりに「本気聴き」をしました。

安田 あ、ほんとに。

新川 ぼくのアルバム(「Paintings of Lights」)
   が出るっていうタイミングで、安田さんも
   「ぼくももうすぐ出すんですよ」
   って教えてくれたじゃないですか?
   その偶然に、すでにピンと来てたんです。
   予感が。

安田 はいはい。

新川 なんとなく
   「それはすごい作品なんじゃないか?」
   って気がして。

安田 (笑)

新川 で、あえて試聴とかもしないで、
   発売されてから
   すぐタワーレコードに行ったんですよ。
   で、CDを見つけたら、なんか・・・
   「これはただごとじゃないぞ」(笑)。

安田 あのー(笑)。
   ジャケットに顔出してる時点で
   「本気が伝わってくる」って、
   よく言われますね(笑)。

新川 そうそう(笑)。
   最近アーティストの顔が出てる
   ジャケットって、あんまりないんですよね。
   だから「顔出てるじゃん」とか思って・・・

安田 (笑)

新川 これはすごいアルバムに違いないと思って、
   買って帰ったんですけど・・・
   やっぱり、1曲目聴いてから、もう・・・
   止められなくなりました。
   最後まで聴き入っちゃいました。

安田 あー、ありがとうございます。

新川 なかなかそういうアルバムというか、
   音楽に出合わなかったんで・・・

安田 まぁ、だからたぶん、
   新川さんの中に通じるものがあるからだとは
   思いますけどねぇ。
   ・・・新川さんが特殊なんだと
   思いますけど(笑)。

新川 (笑)そうなんですかねぇ?
   いやー、でも、ほんとに良かったですよ。
   素晴らしいアルバムだなと思って。
   最後まで聴かせるって、なかなか・・・

安田 あー、最後がまた長いですしね(笑)。

(※最後の曲「Journey's End in the Eastern Evening Sky」は
 15分を超える大作。不安になるほどアウトロが長い)

新川 そう(笑)。
   なっかなか終わらないっていう(笑)。

(つづく)