2015年5月20日水曜日

対談。安田寿之 × 新川忠(8)


C H A P T E R 8 ブライアン・イーノ。


安田 CDショップって
   軒並みなくなっちゃいましたけど、
   本屋って、ショッピングモールにも
   必ずひとつはあるじゃないですか。

新川 そうですね。
   本屋さんはなくならないですよ。
   あれはずっとあると思います。

安田 まぁ、比べるのが
   良くないのかもしれないですけど、
   その違いはなんだろうな?と。

新川 やっぱ歴史じゃないですか?

安田 そうそう、歴史ですよね。

新川 CDなんて本に比べたら(笑)、
   昨日今日出てきたようなものですよ。

安田 そうそう、そうですねぇ。
   それはやっぱり大きいと思いますねぇ。
   パピルスに
   書かれてたわけですからねぇ(笑)。

新川 そうですよ(笑)。
   それに比べれば・・・
   レコードまでカウントしても
   かなわないですよ。

安田 まだ100年ちょっとですもんね。

新川 20世紀の話ですもんね。
   それ考えたら、CD弱いですよねぇ(笑)。

安田 うんうん。だからまぁ、
   よくメディア論みたいなニュース
   あるじゃないですか。
   CDはもうダメになった、
   じゃあデジタルがどうとか、
   ライブに行けばいいんじゃないかとか・・・
   そういうのは、全然気にしなくていいと
   思ってるんですよね、ぼくは。

新川 ぼくもそう思ってますよ。

安田 そういうのにミュージシャンが
   一喜一憂するっていうのは・・・
   違うと思いますねぇ。

新川 うんうん。

安田 そんなことは・・・
   なんだろう、音楽ライターの人に
   まかせておけばいいわけで(笑)。

新川 論じたい人たちに(笑)。

安田 そうそう(笑)。
   でも最近、みんななんか、
   カセットで出したりとか・・・

新川 あ、そうそう、昨日ニュースで見た。
   メタリカがカセットテープで販売(笑)。

安田 うんうん。

新川 いいなぁと思ったんですけど。

安田 だからちょっとバージョンを変えて、
   カセットバージョンはこういうのとか。
   デジタルはこれで、CDはこれでとか。
   アナログはこんな感じとか、
   ちょっとずつバージョンを変えて、
   いろんなメディアで出すのも
   いいと思いますし。

新川 そうですね。

安田 どういうメディアで出したいかっていうのは、
   やっぱり考えなきゃいけないと思うんですよ、
   ミュージシャンが。
   何も考えないでCDで出してたっていうのも、
   衰退した原因のひとつだと思うんですよね。

新川 うーん。

安田 こういう音楽だから
   こういうメディアで発表したいっていうのを、
   ちゃんと考えていれば・・・
   当然やっぱり愛情も違ってきますし、
   形になったときに、伝わると思うんですよ。

新川 あー、それはちょっと
   耳の痛いお話なんですけど・・・
   ぼくはそこまで考えなかったです(笑)。

安田 いやいやいや(笑)。
   ・・・そう、「音楽家の写真展」
   っていうのを、以前やったんですけど。
   「一点もの」の音楽を作ろうと思って。

新川 あれ、面白いと思いました。
   行きそびれたんですけど、観たかったです。

安田 だからその・・・音楽業界の人は
   「そんなことして、どーすんの?」と(笑)、
   言ってたんですけど。

新川 (笑)いや、あの発想、面白いですよ。
   売れちゃったらそれで終わりっていう(笑)。

安田 そうなんです。
   自分でも、もう聴けないっていう(笑)。
   だから、違う業界の人とかは、
   面白がってくれましたね。
   やっぱり・・・
   いっぱいコピーが売れたら、
   その音楽は成功だっていうのが、
   おかしいと思ったんですよね。

新川 安田さんって、そういう・・・
   なんていうのかなぁ、
   作品そのものだけじゃなくて、
   音楽の在り方とかそういうことに関しても、
   ユニークさというか、
   独創性を求めたりされますよね。

安田 そうですね。
   音楽家の仕事っていうのは、
   曲を作って、歌って、演奏して・・・
   っていうだけじゃないと思うんですよ。
   やっぱりこう、
   考えることが仕事だと思うんです。
   だから、音楽のことだけしかわからない
   っていうのでは・・・
   やっぱり良くないと思うんですよねぇ。
   ぼく、すごく尊敬してる
   ミュージシャンの一人が、
   ブライアン・イーノなんです。

新川 あの・・・同じです。

安田 あ、そうですか?
   やっぱり、すごく・・・
   深いですよね、考え方が。
   よく考えてるなっていうのが、
   すごい伝わるんで。

新川 なんか今、つながった感じがしました(笑)。
   ブライアン・イーノで。

安田 (笑)

新川 あー、そっか、やっぱりって思いました。
   ぼくもそうなんです。
   あの、イーノの音楽っていうよりかは、
   まぁ、音楽も好きですけど、むしろ・・・
   昔ね、ブライアン・イーノの研究本みたいなの
   買ったんですよ、こんな分厚いやつ。

安田 あー、ありますね。

新川 あれ読んで、
   「すっげぇおもしれぇこの人」
   と思ったんですよ。
   その、音楽よりも、
   この人の考えてることとか、
   発想の仕方とかが、ほんと面白くて。

安田 そうですよね。

新川 もう、共感しまくりの(笑)。
   すごい同調したんですよね。
   安田さんは、そういったユニークさとか
   独創性を追求する考え方っていうのは、
   どのへんで芽生えたんでしょうか。

安田 やっぱり・・・
   たぶん、ほっといても
   どんどん売れてれば・・・
   考えなかったかもしれないですね(笑)。

新川 (笑)

安田 やっぱり90年代後半とかに、
   自分はもちろん体験してないですけど、
   例えばレコード会社と契約するだけで、
   何千万ももらえたりとか、
   そういう世界があった
   っていうのを聞くと・・・
   そんなん、やっぱおかしいじゃないですか。
   何も作ってないのに。

新川 はいはい。

安田 なんか、自分とこと契約してもらうから
   何千万あげるとか、
   そんなことおかしいですよね?
   そんなことやってたら、
   そりゃ立ち行かなくなるだろうなと
   思いますよね。
   だから・・・

新川 あ、じゃあ、もともとあれじゃないですか?
   けっこう「パンク」な・・・

安田 それはあると思いますね。

新川 そういうものに対する反発なんですね。

安田 1回モノラルのコンピレーション
   (「-MONOPHONIC-ENSEMBLE-」)とか
   作りましたけど、まぁ、それは、
   ちょっとパンク的なスピリットはありますね。

新川 やっぱり面白いことやる人って、
   そうなんですよ。
   反骨精神旺盛ですね、だいたい。

安田 人と喧嘩したいわけじゃ
   ないんですけど(笑)。

新川 そうですよね(笑)。
   そういうことじゃなくて。

安田 いかにこう、それて(笑)、
   「なんじゃあいつ?どこいっちゃうんだ?」
   みたいなことやってるのが好きですね(笑)。

新川 惹かれるんですよね、そういうことに。
   ぼくの場合は、もともと美術のほうに
   興味があったもんですから・・・

安田 インタビューで、
   絵描きになりたかったって言ってましたよね。

新川 そうなんです。
   だから、ぼくが持ってる
   非ミュージシャン的な部分っていうのは、
   そこから来てるんですよ。
   もともと美術志向だったっていう。
   だから、ブライアン・イーノに同調した
   っていうのも、そういうところで・・・
   イーノもアートスクールに通ってたでしょう?
   ぼくはパンクとかニューウェーブのバンドも
   好きなんですけど、あのへんもやっぱり、
   美大生とかアートスクールの連中が、
   パフォーマンス・アートの形態として
   音楽を選んだっていうことで、
   全然ミュージシャンとは違う発想で
   音楽やってたわけじゃないですか。

安田 うんうん。

新川 あのへんの感じが、
   ぼくはすごいわかって。
   まぁ、表現してるものは
   全然違うんですけど(笑)。
   スピリットは一緒ですね、
   そのへんの人たちと。

安田 はいはい。

新川 だから、もうちょっとこう、
   アバンギャルドな音楽やってたら、
   みんな腑に落ちてくれたのかなと
   思うんですけど・・・

安田 (笑)ポップですよねぇ。

新川 わりと「ちゃんと音楽じゃん」
   みたいなことをやるもんですから(笑)。
   余計わかりづらいみたいな(笑)、
   そういう印象を持たれてしまう。
   だから、ブライアン・イーノとか
   パンクの話すると・・・
   ぽかんとする人が多いです(笑)。

安田 (笑)

(つづく)